平成元年(1989年)秋。
伊勢地方は2つの大きな台風に襲われました。稲田は全滅。伊勢神宮に奉納するお米を作る「御神田」も、収穫間際の稲が全てなぎ倒されるという事態に陥りました。
しかしその御神田で唯一、倒れることなく立っていた稲がありました。DNAを調べてみると、それは突然変異から偶然できた新種。まさに「神の米」として話題になりました。
それが「イセヒカリ」です。
コシヒカリと比べると稲穂の背が低く、それが倒伏を免れた理由の一つとされるイセヒカリ。生命力が強く、高い糖度を誇ります。一穂あたりのモミ数が多い=収穫量が多いのも特徴で、その点も縁起がいいお米といわれる由縁です。
そうした特性も鑑みて、伊勢神宮は、この御神田で生まれたイセヒカリを奉納米に相応しいと判断。「神宮御鎮座二千年」の年に、全国各地の神社に種もみの下賜(かし:配布)を認めました。
創建は約二千年前と言われる伊勢神宮。
三重県伊勢市にあることから「お伊勢さん」と親しみを持って呼ばれていますが、古来から最高の、特別格の宮=全ての神社の上に立つ神社です。
皇族のご先祖にして日本人の総氏神である、天照大神(アマテラスオオミカミ)をお祀りしていることからも、日本最高位の神社と称されています。
「神嘗祭(かんなめさい)」は、その年に収穫された新穀を最初に天照大神に捧げて感謝するお祭りです。
伊勢神宮で年間1500回ほどもある祭祀の中でも最も重要なお祭りのひとつとされています。
歴史は古く、伊勢神宮の創建当初にまで遡ります。
天照大神を祀るに相応しい場所を探す旅をしていた倭姫命(やまとひめのみこと)が、伊勢国で鳴き止まない鶴=真名鶴(まなづる)を目にします。その鳴き声を頼りに鶴を探したところ、真名鶴は千の穂が茂る一本の稲を咥え、五十鈴の宮へ献上していたのです。それを知った倭姫命が、その稲穂(お米)と、それから作った御神酒を御饌(みけ/神社や神棚にお供えするもの。供物)として供えたのが神嘗祭の始まりであると言われています。
このように、由緒ある神嘗祭へ献上するお米作りに携われること。これは私たちにとって大きな喜びであり、誇りでもあります。
愛知県のほぼ中央に位置する岡崎市。伊勢神宮に残る最も古い書物によると、実は三河・岡崎は、古より伊勢神宮の神領であり、食物を育て納める御厨(みくりや)と呼ばれる土地だったそうです。
そして伊勢神宮の「神嘗祭」に合わせ、「懸税(かけちから)」と呼ばれる稲の束を奉納する際、まずは岡崎に鎮座する「稲前(いなくま)神社」へ納め祀り、その後、伊勢へ奉納していた」と伝えられています。
しかしその歴史はいつしか閉ざされ、長い年月が過ぎ去っていました。
私たちはその岡崎の若松町にある「食事とお酒のだいどころ・TOMOE」を拠点に、2016年から活動を始めました。
きっかけは、伊勢の神宮で育て、神前に御供えする「イセヒカリ」と「カグラモチ」の、2つの種籾を手にしたことから。
全くの偶然、しかし何かのお導きだったのか…。ここから私たちは、稲作をする機会に巡り合いました。そして決意したのです。
―伊勢神宮と岡崎の関わりを、その歴史を再現しよう。農薬も使わず、人の手で植え、人の手で収穫して、古式に則った手順で伊勢神宮へ奉納させていただこう―。
多くの方からのお支え、貴重で有り難いご縁をいただいた結果、育てたお米は伊勢神宮の外宮・内宮・伊雑宮の神嘗祭にて、特別に瑞垣(みずがき)へその懸税を懸けて奉納することが叶いました。
それは、農業の危機を知ったことが始まりでした。
衰退して行く米農家の方々の現況を知り、自分でお米の育て方を知っておかないと、
—このままではお米が食べられなくなる時代がやってくる—
そう思っていた時、手にしたのが「イセヒカリ」と「カグラモチ」の、2つの種籾でした。
こんな想いに至った矢先に、伊勢神宮で育て、神前に御供えする品種と同じものが手に入るとは。しかも、伊勢神宮との深い歴史があった、この岡崎で。
試行錯誤をしながら、たくさんの方にサポートいただきながら、稲作に挑みました。
その初年度、見事に稔った稲を伊勢志摩にお持ちすることができたのです。
私たちは日本の命である稲作を通し、日本の重要な歴史と伝統に触れたことで、人が人である由縁を知り、心の豊かさを知ることができました。
一度途切れてしまった、伊勢の神宮と岡崎の繋がり。
岡崎の歴史と伝統、この土地の価値を、後世に形として残して行くためにTOMOEを立ち上げ、採れたお米をご提供させていただいています。
私達が、この稲作で経験した“日本人としての喜び”を、これからも皆様と分かち合いたいと思います。
ちょっとこだわりのお酒とお食事が楽しめるバル風のお店です。
長時間じっくり煮込んで、箸で切れるほど柔らかい「もつ鍋」などの煮込み料理。1年半かけて完成した、鯛の美味しいスープが効いた「シーフードパエリア 」。そして日替わりの手作りデザートまで、店主が一皿一皿に詰めこんだこだわりをお楽しみいただけます。
厳選したワインやクラフトビール、ウィスキー等もご堪能ください。
食事とお酒のだいどころ TOMOE
■岡崎市若松町宮前34-3
(美容室salvatore隣/JR岡崎駅東口 徒歩17分)
■TEL:0564-73-3215
■ランチ
11:00~14:00/LO.13:30
■ディナー
火〜水|17:30~22:00/LO.食事21:00、ドリンク21:30
金〜日|17:30~22:30/LO.食事21:30、ドリンク22:00
■定休日
月曜日・木曜日
※田んぼ作業やイベント、神事などで臨時休業をいただく場合があります。ご了承ください。
お届けするのは、甘酒とオリジナルブレンド米のセット商品です。
額に汗して、私たちが育てた「イセヒカリ」を原料に、一つひとつ手作業で作りました。コシヒカリの3倍もの糖度を誇るイセヒカリならではの深い味わいで、自然の歯触りをそのまま残した、まさに「食べる甘酒」です。
一緒にお届けするお米も、もちろんイセヒカリ。ブレンドしたのは最高級の餅米「カグラモチ」で、伊勢神宮の伊雑宮から貰い受けたお米です。
お田植えからはじまる商品作り。わたしたちにしか作れないセット内容。きっとご満足いただけると信じています。
なお、こちらの販売収益は、今後も田んぼ事業を持続させるための会費という位置付けです。
特別な味を楽しみ、悠久の神事に思いを馳せて、未来を育む礎となる。それもひとつの「隠し味」としてご堪能いただければ幸いです。
〒444-0826 愛知県岡崎市若松町宮前34-3
TEL: 0564-73-3215